巨人・岡本和真内野手（１９）が１０日、秋季キャンプのシート打撃で驚がくのスイングを披露した。２投手を相手に３打席立ち、右翼方向への強烈な二塁打を２本。高橋由伸監督（４０）を「当然、期待しています。１軍で出ている選手を脅かしてくれたらいいですよね」と喜ばせた。
　空中で勢いを増した岡本のライナーは、猛ダッシュで背走する右翼・立岡の頭上を越えていった。「感触は普通でした。強く振ることだけを考えていましたが、強引にならなかったのはよかったです」。今キャンプ初となるシート打撃。サウスポー・公文の外角直球を右方向へ押し返した。投手と対戦するのは１０月のフェニックスリーグ以来だったが、ファーストスイングで仕留めた。
　続く２打席目も、強烈な打球をかっ飛ばした。左の今村の外角直球を右翼線へ。最後の３打席目は三ゴロに倒れたが、２本の二塁打で先輩投手たちを圧倒した。打球の勢いは、もはや阿部ら主軸クラスと同等。目の前で見ていた由伸監督も「良かったですね。今年も１軍で試合に出ていますし、当然、期待しています。１軍で出ている選手を脅かしてくれたらいいですよね」とうれしそうだった。

　進化の速度は増すばかりだ。今季、８月下旬に１軍昇格を勝ち取ると、３打席目でプロ初安打となる本塁打。内田打撃コーチが「１軍を経験して、ひと皮も、ふた皮もむけた。普通だったら３、４年かかるが、この数か月で一気にそこまで来た」と評価するように、シーズン終了後に参加したフェニックスリーグでも好成績を挙げた。
　今キャンプでは、バットを内側から出すこと、スタンス幅を広げすぎず一定にすることなど、大飛躍するための土台固めに取り組んでいる。レギュラー奪取への鍵を握る守備練習では、フットワーク鍛錬の一環として、三塁以外のポジションに就いてノックをさばいている。「１軍の試合に出るために、取り組んでいることを、しっかり続けていきたい」。１１日は休養日で、秋季キャンプは残り２クール。この期間中、怪物ルーキーはどんな進化を遂げるか。
　◆急成長している岡本
　▽１軍初昇格　８月２７日に１軍初昇格し、２８日の中日戦（東京Ｄ）で初出場。７点リードの７回無死一塁から代打で二飛。
　▽プロ初アーチ　９月５日のＤｅＮＡ戦（横浜）、３点を追う５回２死三塁で代打。砂田からプロ初安打となる左越え２ラン。

　▽初スタメン　９月１９日のヤクルト戦（神宮）に「７番・三塁」で初スタメン。タイムリーや初盗塁をマーク。
　▽初お立ち台　９月２６日のヤクルト戦（東京Ｄ）、１点を追う４回１死三塁から右前へ同点打。ヒーローインタビューで「奈良県から来ました、ジョニー・デップです！」
　▽覚醒　１０月５〜２６日のフェニックスリーグでは１７試合に出場して６３打数２８安打、２本塁打、１６打点と圧倒的な数字を残した。

　巨人の高橋由伸監督（４０）が２９日、川崎市のＧ球場で行われている秋季練習を２日続けて視察。岡本和真内野手（１９）に「力をつけてレギュラー争いを」と熱い視線を注いだ。ノックやロングティー打撃で汗を流す黄金ルーキーを、首脳陣がそろって熱血指導。由伸巨人を支える「４番・サード」に育て上げるつもりだ。
　数々の修羅場をくぐり抜けてきた勝負師の熱視線にも動じなかった。岡本は高橋監督の前で、堂々とバットを振り抜いた。「特に気にせず、しっかりとレベルアップしようと思ってやっていました」。全体練習後のロングティー打撃。今季４番に座った坂本、亀井、中井と一緒に行ったが、見劣りしない鋭い打球を外野に飛ばした。
　高卒１年目の今季は１７試合、打率２割１分４厘、１本塁打。９月５日のＤｅＮＡ戦（横浜）では代打で初ヒット初アーチを放った１９歳。指揮官ら首脳陣は「４番・サード」に育て上げるために動き出した。

　居残り特打では、内田打撃コーチから「バットを内から出せ」の助言のもと逆方向にはじき返した。ただ一人、両足首に伸縮性のあるバンドを巻いた。スタンスが大きくなりすぎる悪癖を抑えて軸回転で打つこと、両足の内転筋を鍛えることが目的だ。

　今年１軍で見て、能力はあると思った。力をつけてレギュラー争いをしてくれればいい

　終日、雨が降っていたため室内でフリー打撃や、ティー打撃などで打ち込みを中心に行った。「（バットを）振って、振って、振るだけです。振れる力をつけるように今、やっています」

　近未来の「ダブルＯ砲」が競演した。巨人の大田泰示外野手（２５）が１５日、今キャンプ２度目のシート打撃に臨み、左翼フェンス直撃の二塁打。一方、昨年のドラフト１位ルーキー・岡本和真内野手（１９）は右中間へ痛烈な当たりを放つも、“怠慢走塁”によってコーチから「喝」を食らう一幕も。第２クール最終日、右の長距離砲コンビが見せた。
　一瞬にして右中間を破った岡本の打球に、スタンドのファンがどよめいた。だが…。二塁を蹴ったところで、まさかのスピードダウン。外野からの返球により、あえなく三塁タッチアウトとなった。三塁コーチャーとしてシート打撃を見守っていた小関２軍外野守備走塁コーチは、「ちゃんと走れよ！」と頭を平手でピシャリ。どよめきから一転、スタンドのあちこちから笑い声が上がった。

　１０日のシート打撃では２本の二塁打を放ち、これで３本目。自慢の打力をいかんなく発揮してアピールしているが、この日は“怠慢走塁”でも注目を集めてしまった。そんな岡本劇場には、由伸監督も「結果もそうですし、目立ってはいると思います。（走塁？）今は打つことにテーマを置いて練習しているので、そこらへんは、こちらにも落ち度があるかもしれませんけどね…」と苦笑いするしかなかった。
　内田打撃コーチが「通常の３、４倍のスピード」と絶賛するように、打撃面では驚異的な進化を遂げている。だが、来季のレギュラー奪取へは守備力強化だけでなく、走塁を含めたプレーの精度アップも求められる。もちろん、練習でも気は抜けない。「次からはちゃんと…」。最終打席では強烈な三直を放ち、練習後の３・３キロ走では意地の激走でトップ１０入り。ちょっとだけ、挽回できたかもしれない。

　Ｇ球場内のクラブハウスで岡本がやらかしていた。自販機でジュースを購入し「お疲れ様でした」と記者にあいさつをして帰宅。記者席の入り口には下着や靴下が入った袋が置いたままに…。１０分後、河野がやってきて「これ、和真（岡本）のですよね？」と忘れ物に気づき「洗ってあげたら喜びますかね」と言って持ち帰った。臭いはきつそうにしていたが、河野の優しさに感動しました。