魂を込めた直球が、ミットに収まる。畠は、ロペスのバットが空を斬ると、雄たけびを上げた。６点リードの６回２死二、三塁。カウント２―２。最後は外角高めの１４７キロ直球で空振り三振を奪った。「負けられない戦いなのでやってやろうという気持ちでやりました」。同率３位のライバルとの最後の直接対決で７回２安打無失点。対ＤｅＮＡ戦３戦全勝勝と“キラー”ぶりを見せつけ、３位の座を死守した。
　中７日で挑んだマウンド。「初回から飛ばしていこうと思った」と、初球に１５１キロをマークした。初回２死では筒香を１４６キロの直球で空振り三振。これで３試合で計８打数５三振と圧倒している。５回まで無安打に抑え、８月２０日の対戦に続き、同級生の浜口に投げ勝って。６勝目を挙げた。
　グラブには「魂・技・体」という刺しゅうがある。中学時代、野球部の顧問に臨時としてきた先生が常に「魂！　魂！」と連呼していたのに影響を受けた。「全ては心、つまり魂から」という教えからだ。「心・技・体は一体。心は魂だ」。由伸監督が「不思議な感じ」と評し、一見とらえどころのない右腕だが、強気のマウンドさばきの根幹にはこの３文字がある。

　記念の一打も生まれた。４点リードの５回１死満塁。加賀の高めの直球をライナーで中前に運んだ。プロ２４打席目で初安打、初打点。試合前までは２１打数１７三振。７月２６日の広島戦（京セラＤ）から５試合で、２リーグ制後の球団ワーストとなる１０打席連続三振を喫したこともあった。
　近大福山高時代は５番か８番。「バッティングは好きなんですけど当たらないんです」。見かねた木村投手兼トレーニングコーチが手をさしのべた。Ｇ球場では、フリー打撃で何百球も投げてくれた。「内野ゴロが打てるようになってきた。そろそろ期待できるかも」と初安打を予言。畠も「木村さんのおかげです。感謝です」と頭を下げた。
　お立ち台では「ナイスバッティングでした！」と３回叫び、笑いを誘った。指揮官は「今までの当たりからは想像できない当たりでちょっとびっくり。練習の成果が出たね」とほほ笑んだ。一緒にお立ち台に上がった村田も「あと１９９９本打ってほしい」とジョーク交じりに褒めちぎった。

　ＣＳへ向け、「勝負の週」と位置付けた５試合を、２勝１敗２分けで乗り切った。由伸監督は「２勝したかったけど昨日負けてしまったので、今日勝ったことは大きい」とうなずいた。「投げるからには勝って上位に行きたい」と言い切った畠。投打で価値ある白星を引き寄せた。

　畠は、〈１〉前日（１６日）チームが敗れてプレッシャーがかかるマウンド〈２〉ここ１か月で３度目のＤｅＮＡ戦先発となり相手が慣れてきている―という２つの厳しい条件の中で圧巻の投球だった。
　初回、筒香をオール直球で空振り三振に仕留めた。筒香は９回には、直球とフォークを交ぜてきたカミネロから、中前へ難なくヒットを打っており、決して調子が悪いわけではないだろう。畠の直球が、打者が思っている以上に球威があり、タイミングが合わないということだ。自信になる。
　４、５回は多少バテて球が浮き出した。まだ上半身に頼って投げているからだ。もっと体全体を使って投げれば、回を追っても球威が落ちなくなる。とはいえ、中盤の苦しいところを乗り越えて７回を投げきったことは評価できる。
　この真っすぐがあれば、畠は短期決戦のＣＳで秘密兵器になれる。これからも「直球で空振りを取る！　押し切る！」という気持ちを忘れないでほしい。

活きのいいのが出てきたと思うと翌年いなくなるんだよな(笑)

　Ｇ球場の室内練習場では畠が打ち込みを行っていた。１７日のＤｅＮＡ戦（東京Ｄ）でプロ初安打、タイムリーを決めたルーキーは「スイングと音が、良くなってきた気がします」とにんまり。一打で自信をつけたようだ。それでも、同学年の二刀流、日本ハム・大谷の話題になると「あれは別格です。ああいう打球を打たれないように自分は投球で頑張りますよ」と一刀流を極める決意をしていた。

　２３日の広島戦（マツダ）に先発する畠世周投手（２３）が２１日、“カープキラー”襲名を目標に掲げた。ＣＳ出場を果たせば、下克上日本一には避けて通れない相手に対し「今は絶対、畠は余裕というイメージがある。記憶の改善じゃないけど、嫌だなと思わせるようなイメージを植え付けたい」と闘志を燃やした。
　広島戦は２試合で１敗、防御率は７・２０と苦戦。だが７月２６日の広島戦（京セラ）でプロ初黒星を喫した後は自身４連勝。苦い思いを糧に、しっかりと実力をつけＤｅＮＡ戦は３戦３勝、阪神は２戦１勝と上位チームを抑えてきた。自信をつけ課題だった長打も減少。「厳しいところは厳しく攻めて、うまくカウントを取れれば」と意気込んだ。
　マツダでは７月６日のプロ初登板で４回４失点のホロ苦デビューだった。Ｇ球場でブルペンに入り調整したルーキーは「目の前の試合を全力でするだけです」と、地元・広島での快投を誓った。

　２３日の広島戦に先発する巨人のルーキー右腕・畠がマツダで短距離ダッシュなどで調整した。
　今季は広島に２戦０勝１敗、防御率７・２０と苦手な相手。７月６日にデビューした球場での再登板に「アウェー感がすごいというのが一番の印象。その中で歓声をどれだけ自分のものにできるか」。

　近大では授業に出られるときは全部出ていました。楽しかったのは囲碁の授業ですね。最初はルールも分からなかったんですけど、「囲碁をやって単位をもらえるの？」と思って履修してみたら、けっこう強くなりました。半年間、50人ぐらいのクラスで２回しか負けませんでしたから。
　僕がドラフトにかかったとき、囲碁の先生が後輩たちに「囲碁にも��勝負勘�≠ｪ大事。やっぱり畠君は賢かった。囲碁でも１、２番を争っていた」と授業で言っていたというのをあとで聞いて、うれしくなりました。コツですか？　やっぱり勝負事は、先を読むことが大事だと思いますね。野球ではまだまだだと思いますが、囲碁は自信があります。

　悔しさがこみ上げる。巨人・畠は広島にリベンジを果たせなかった。初回２死。丸へ初球の内角への直球を右翼席に運ばれ、先制点を許した。「甘い球を見逃してくれず、思い切って攻めることができなかった」。丸には登板した３試合すべてでアーチを許した。その後はなんとか粘り、６回９８球、３安打３失点（自責１）。今季３敗目を喫した。
　焦りが出た。追いついた４回。先頭の菊池に左前打、丸に四球を与え無死一、二塁。松山へ６球目を投じる前に二塁けん制のサインが出た。だが、畠の送球のタイミングが少し早くなり、坂本勇のベースカバーが遅れた。中堅へボールが抜ける悪送球。二、三塁と自らピンチを広げ、直後に右前適時打で勝ち越された。畠は「うまくショートと連係ができてなかった」と反省しきりだった。