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ホスラブてめちゃ保守

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だよな

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河野は、「明日……もう一度だ」といった。
「承知した」と、フルシチョフも応じた。
残された領土について、いよいよ第三回目の河野・フルシチョフ会談がもたれたのは、翌18日の夕方4時であった。党本部に向かう前、河野は、
― これで話し合いをつけなければならない。
と、意を決した。
― が、なんとかいけるのではないか。
奇妙なかんが、彼にはあった。が、それは動物的なものではなく、これまでの経過をたどってみた上でのそれであった。
― ソ連側は、最高のスタッフをそろえ、すべて好意的な態度に出てきている。妥結することを、方針としている様子だ。とすれば、領土についても、一致点が生み出せるはずではないか。
しかし河野は、決して安易に合意に到達できるとは思っていなかった。
― それに至るまでに、フルシチョフは脅しやすかしや、あらゆる手を使うだろう。それに気圧されて、損なところで妥協してはならない。突っ張って、こちらの思うところにまで、向こうを譲歩させて、妥結するのだ。この苛烈な話し合いで、自分は血へどを吐くかも知れない……。

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4時からの交渉は、事実そのとおりに苛烈だった。一歩もたじろがない河野に、「そんなことが、承認できるか……」と、フルシチョフはテーブルを叩き、
「そんなら決裂だ」と喚いた。
あとで河野は、「ああいう交渉は、一生に一度でたくさんだ」と洩らしたくらいであった。フルシチョフの攻めに、河野は、
― 決裂か……。
と思った瞬間、貧血症状のめまいをおこして、テーブルに突っ伏した。しばらくソファに横になりながら、もつれる舌でフルシチョフに応酬した。最後にフルシチョフは、またしてもテーブルを、どかんと叩いたが、こんどはこう怒鳴った。
「よし、なんとかしよう……」
ようやくのことで、双方が譲歩し合うことになった。歯舞、色丹については、「ソ連は、平和条約発効時に、歯舞、色丹を日本に引き渡すことに同意する」と、これはフルシチョフが一歩譲った。
南千島の継続交渉については、河野が折れて出て「両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」という表現をとることになった。

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マジでしねやクソペルー人(σ・∀・)σ

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直接、南千島に触れないこの表現は、日本側としては、
「南千島の問題をふくんで平和条約の交渉を継続するもの」と解釈できるし、ソ連側はまた、「南千島はソ連領に決定ずみだから、それを除いて、平和条約に関する交渉を継続する」と解釈できるように作られたものであった。日ソとも、それぞれが有利に解釈できるように作られたこの条文を、あとで松本俊一は、「どの過去の条約、協定にもみられない名表現」と称した。名表現であるがゆえに、のちのち日ソ間に北方領土問題という宿題を残すことになるのだが― その時点では、こうした妥協以外は、ソ連にしても、日本にしてもなし得ないところだった。
話がまとまると、河野は、「鳩山首相に裁断を仰ぐ、すぐに回答する」といいおいて、外に飛び出した。
鳩山に、異存はなかった。
「よくやってくれた」と、涙ぐむ鳩山をあとに、河野はあわただしく共産党本部にとって返した。フルシチョフと、握手をかわした。この肥った奇妙な怪物は、それまでの激論をけろりと忘れたように、「よかったな」といって、河野に片眼をつぶってみせた。

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10月19日午後5時50分、クレムリンにおいて、日ソ共同宣言は、日本側・鳩山、河野、松本の三全権― ソ連側・ブルガーニン、シェピーロフ両全権との間で正式調印された。その結果、日本の北辺が一応安定し、終戦後十年間も寒冷の地に残された抑留者の帰国が実現、日本の国連加盟が可能になったなどの成果は、無視できない。
自ら病身をひっさげてこのことを成し遂げた鳩山は、11月1日無事帰国した。羽田空港には感謝歓迎の人波とともに反対を叫ぶ右翼団体もあった。
共同宣言は11月27日の衆議院本会議に上程され、賛成365票で通過。この時、吉田派75名は集団欠席をして反対を示した。参議院は賛成224票で承認した。
ソ連側はすでに批准していたので、フェドレンコ外務次官が12月11日夜批准書を携えて来日し、12日午後3時半、外務省接見室で批准の交換が行なわれ、同日付で発効、日ソの国交が正常化した。
18日の国連総会は満場一致で日本の国連加盟を承認、重光外相は「日本は東西の架け橋になる」旨の名演説を行ない、任務を終えて翌年1月26日静かに死去した。

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― 日ソのその後のことですが、共同宣言でやってしまって、現在まで領土問題でどうにも決着がつかない。これでは永久に平和条約はできそうにもない感じですが、こういうふうになるかもしれないというのは、当時予想されたんでしょうか。
岸― われわれが共同宣言でやむを得ないと決意したのは、これは日ソ間だけでは解決しない、国際情勢の変化を待つ以外にないという気持があった。
― それでもあの時ソ連側が、よく歯舞、色丹だけでも返すと言ったもんですね。ソ連は一度とったところは絶対返しませんから驚きますけれど。
岸― 行政的なことからいうと、歯舞、色丹は北海道の一部であって、千島ではない。その点についてソ連は多少別の考えがあったかもしれない。

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私が総理をやめてフィンランドを訪ね、ケッコーネン大統領に会った時の話ですが、スターリンと親しかったケッコーネンが国境問題でモスクワへ行きスターリンと会った。お互いに国境を接していて、フィンランドは小さな国だから、ソ連と仲よくしていかなきゃならん、ところがこんどの戦争でソ連はフィンランドの土地を一部とってしまった。あなたのほうからいえば爪の先ほどだが、わがフィンランドにとっては重要である。国民感情からいってもまずいから、返してもらいたい、と言ったという。
そうしたら、それまでにこにこ話していたスターリンが、急に厳然として、戦争によって変更したる国境は戦争によるにあらざれば、これを変更することなし、これは古今の鉄則だと答えたそうですよ。だから、いくら日本が領土を返せと言ったって、ソ連は返しゃしないよ、というのがケッコーネンの結論だったね。

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「健全で、若い人に、あとを譲りたい」と、11月2日の記者会見で、引退を表明したあと― 鳩山首相は、後継者について、ことさらに自分の意思を明らかにするのを避けた。
この鳩山の沈黙は、ひとつには、日ソ交渉の妥結という宿願を果たすと同時に、鳩山のたましいのなかから、権力への脂っこい野心や、粘っこい執着が、消失してしまったことによっていた。またひとつには、
― 政界を去っていく自分が、あとに波紋を残すべきではない。あとの人びとが、その意思ですべてを決定してこそ、政治はあたらしくなる。過去とは異なったあたらしい場面を迎えることができる。
という彼の政治観にもよっていた。鳩山は、後継者問題については、目を閉じて、眠りに就いた形であった。
それに、河野一郎は、強い不満をいだいた。わざわざ、音羽の坂を登ってきて、鳩山を揺すぶり起こそうとした。
「あんたが、なにもいわずに、このまま党を放置しておいたら、分裂の危険がある」と、河野は深刻なことをいった。

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すでに― 岸信介、石橋湛山、石井光次郎の三人は 2日の鳩山の引退声明を契機に、公選への闘いをスタートさせていた。それが日を追って、熾烈化しつつあることは、鳩山も、承知しているところだった。そうした現実を踏まえた上で、鳩山は、河野をさとした。
「党が分裂……というようなことはあるまい。だれが総裁になるか、だれがその椅子を逸するか……椅子についた総裁が気に入らない、椅子につけなかったのが不満だと、党を分裂させたところで、はたしてその人間にとって、とくなことがあるだろうかね? かりに岸君、あるいは石橋君、また石井君が、公選に敗れたからといって、党を割った場合、何人の人間が従っていくか……せいぜい三、四十人だろう」
そういわれれば、そんな見当だろうと、河野も思わないわけにはいかなかった。
「それに、二年前、三年前とは、政界の様相も、条件も変わっている」と、鳩山は話を続けた。

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「あのころ、ぼくや君、それに三木武吉君……たしかに三十名足らずで、自由党を分裂させたが、具体的に吉田倒閣、占領政治脱却という必須の名分があったからだ。それに、連携できる保守の野党として、改進党があった。社会党も右と左とに分かれていた。改進党と合すれば、第一党になれる可能性もあったし、左右社会党と倒閣の共闘も組めた。事実、われわれはそのようにして吉田を倒した……」
「…………」
「しかし、いまはだね、まったく事情が違う。党を割って、三、四十名の新党をつくってみたところで、総裁選に敗れたから、そうしたというだけのことだ。なんの名分もないじゃあないか。われわれが分裂したときのような世論の共感は得られない。また合同できる野党もない。それじゃあ第一党の可能性、つまり政権を獲得できる可能性はない。社会党にしても、いまは左右統一されて、第二党になっている。三、四十名の第三党に、力を貸すわけもないだろう。どう計算してみたところで、総裁選に敗れたから分裂……というんでは、算盤勘定に合わない。そんな理屈は、君にだって、とうに解っているはずだ」

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