236 「きた!きたで!」 息子たちが見守る中、船頭である義之さんが叫んだ。 長男の信一郎と次男の信二郎が慌しく見守る中、舵を取る三男の信三郎が「父っちゃ!どっちだ!?」と父義之に尋ねる。 「このまま!このまま!」とぶっきら棒に父義之が叫ぶと四男の信四郎が「ニィちゃん!大きい!大きい、船!流されてる!」というや否や「もっとや!もっとエンジン上げんか!」と母紀美子が返しのついた大銛(モリ)を掲げながら大空高く響くように叫んだ。 「えいやぁ!とう!」の掛け声と共に母紀美子が大銛を海に投げ入れる「もう一本や!サービスしたるわ!ガッハッハ!!」と立て続けに大銛を投げると見事獲物に命中し、母紀美子の「引けや!野郎ども!男なら根性みせんかい!!」の叫び声とともに皆が力いっぱい綱を引く。 「おぎゃ!おぎゃー!おぎゃー!おぎゃ!!(大きいで!大きいで、かあちゃん!)」と昨年生まれたばかりの五男信五郎が泣き叫ぶ、「これ一本で600万やけんの!ええもん食わしたるさかい待っとき信五!」と雄たけびを上げる母紀美子。 匿名さん2015/12/30 19:061