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左翼は偽善者、保守派は正義

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だよね?

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「自民党は前首相を逮捕されて申し訳ないと謝るわけだが、きちんと刎頸の友を縛ったから安心ですと国民にいえるようにしなければならない。第三の山をしっかりやらないと、また経済界のおかしな奴が政治家と組んで外国の会社と変なことをやるかも知れない。おかしいのは十人か二十人、もっといるかも知れないが、まあそんなものだろう。悪い奴だけは捕えて、あとはいい奴だからよろしくというのが本来の出直し改革ではないか」
「さる17日に田中が出所してから随分変わってきた。田中が目白に帰るまでは福田さんや大平さんも、三木首相がロッキード追及と三法案審議を並行してやろうという提案に、あのような態度をとることはなかった」
「反三木派は閣僚を引き揚げるというかも知れないが、引き揚げたら、こっちはどんどん補充する。福田さんも大平さんも大人だから、総務会長らの調停案でも出れば飲むのではないか。三木さんも困っているが、あの人たちも もっと困っているのだ」

しばらくこの稲葉発言に憤懣をぶつけ合った後、皆が揃ったところで挙党協代表世話人の船田中が五役収拾案を議題にのせた。

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「この収拾案は両院議員総会での党議決定の線から著しくはずれている」
と のっけから反対発言を行った。
「その通りだ。われわれとしては、あくまで臨時国会前の党一新を期さなければならない。党一新ということは内閣改造や党役員改選じゃない。三木退陣のことだ」
と水田三喜男がそれに賛意を表した。
それぞれが意見を述べ合ったが、誰もがこの収拾案で事態をおさめようという気はなかった。
「この収拾案では結局、総選挙を三木首相の手で行うという結果になりかねない。解決策にはならんじゃないか」
「それに臨時国会中、三木が解散を食らわせるという危険性もある」
「トップが替わらなければ意味がない」
といった反対意見ばかりが次から次へとくり広げられ、五役収拾案で打開しようと考える者は誰一人いなかった。

その日の午後3時に福田、大平の二人は首相官邸に乗り込んだ。この三者会談は蜿蜒と三時間余に渡って続いた。例によって三木が執拗に粘り抜いたのだ。まず三木は二人に向かってこう切り出した。
「党五役の収拾案は相当に苦心したものだ。私としてはこれを尊重して事態を収拾する決意を固めた。君たちもその線で考えてもらいたい。

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三者会談も僕としては今日が最後のつもりだ。だから一晩中、夜を徹してでも話し合って、君たちの諒解を求めたい」
福田、大平とも、この党五役の収拾案は三木の進退、解散問題については玉虫色ではあるとしても、これまでの三者会談を通じて
ー三木は冒頭解散を行わない。
ー三木は臨時国会の半ばにおいても解散権を行使しない。
という心証を得ているだけに、ほぼ諒解できるものがあった。また三木自体の進退に関しても
ー臨時国会後の挙党体制の確立ということの中に三木の退陣も含まれている。
という解釈をとっていたので、この点についてもそう不満はなかった。
だが挙党協の世話人たちは強硬に反対の態度をとっていた。それがあるだけに二人もおいそれと、この五役収拾案にイエスとは返事ができなかった。
福田は三木に問い返した。
「この五役の収拾案について、われわれが意見を差し挟む余地があるのかないのか、それをまずお伺いしたい」
「五役が決意して拵えたものだ。あの人たちが自分たちのポストを顧みずに決めた案だから尊重したい。しかし事態は先に延ばすことはできないと思っている。どうしてもこの五役収拾案について二人の同意を得たい」

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大平が口を挟んだ。
「24日にも25日も、私たちに総理は会っている。総理はその度に一刻も早く……といいながら今日まで延ばしてきた。今になって一日、二日を争う必要はないと思う」
三木は不機嫌な顔をした。福田は
「まあ五役収拾の案で事態を収めるとしても、玉虫色のところが随分とある。それでは挙党協の連中が承知をしないと思う。具体的な説明を求めたい」
三木はうなずきながら 素っ気なく説明した。
「第一項は党、内閣の人事の刷新をやるということだ。第二項は懸案を処理するため臨時国会を早く開かなければならないという意味だし、第三項は総選挙に臨むため必勝の体制を敷きたいということだ」
すかさず福田は
「大事な一点が 第三項には含まれているのか」
と問い詰めた。
大事な一点というのは、三木の進退問題のことである。三木はこう答えた。
「その第三項は総選挙に必勝を期す……となっている。その表現の中で色々考えているわけだ」
「そこの辺りについて。もう少し詳しく説明をしてほしい」
三木は ぼそぼそと話した。
「僕は政権に恋々としてはいないよ。だが総理大臣というものの進退は、軽々に言及してはいけないと思うんだ。

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総選挙に臨む体制の整備は 臨時国会と並行して皆さんと精力的に話し合うという決意である」
大平が迫るようにいった。
「総選挙に対して必勝の体制を敷きたいと総理はいうが、その必勝体制とはどういうことなのか」
いうまでもなく福田、大平にしてみれば、三木では総選挙は闘えない、闘ったとしても勝てないという認識に立っているのだ。従って大平の言葉は
ーあなたが総理総裁のままでは必勝体制にはならない。
という意味を含めて そういったのである。しかし三木は
「色々なことが勿論 含まれている。しかし君たちが求めているような総理大臣の進退については軽々にはいえないんだ」
と同じことをくり返した。一呼吸おいて
「君たちのいおうとしているところは解るが、それならば福田政権、大平政権ができたとして、それが必勝体制といい得るかね。どうかね」
と三木は二人の顔を見やった。福田も大平も無言であった。三木は更にこういった。
「だからこの問題については臨時国会を開き、それと並行しながら煮詰めていこうといっているわけだ」
「総理は臨時国会とおっしゃるが、その場では財特法案その他を処理していかなければならない。

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そのためには党内協力が必要で 挙党体制がなくてはできない。その体制を あなたはどうするつもりなのか」
と大平は言外に、臨時国会での懸案処理には われわれとしては協力できない、という意をこめていった。
「だからだね、あなた方二人に対して全幅の協力を願いたいんだ」
「しかし全幅的な協力をするためには、大事な一点がはっきりしなければ挙党協が承知はしない」
と今度は福田が執拗にいった。堂々巡りの口論に、とうとう三木が業を煮やした。
「それならば……だね」
と口調を強めていった。
「逆に僕が訊きたいが 福田政権、大平政権ができたら、果たして挙党体制が作れるものだろうか」
福田、大平が政権をとったところで今度は三木、中曽根派が反主流的な立場に立てば 所詮は挙党体制はできないことになる、という応酬であった。
話がしばらく途切れた。先に口を開いたのは三木であった。
「だからこの際は自分としては党役員も改選し 内閣の改造も行って 閣僚を入れ替えて臨時国会に臨もうというわけだ。この新人事については お二人の意見や挙党協の意見も全幅的に入れたい。そうすれば あなた方二人は協力体制をとれるはずだ」
「…………」

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「なるほど五役収拾案は玉虫色であるとか、抽象的で解釈がどうにでもできるとかいういい分はあるにしても、現実には臨時国会前に党人事を刷新して挙党協や あなた方の要望を入れるのだから、それで安心ができるのではないのかね。このような新体制ができれば、仮に僕が冒頭解散を行う、あるいは途中で解散を行うといっても、それは難しい。その意味では君たちの心配は全くないわけだ。その心配のない体制で臨時国会を乗り切った後、今度は総選挙に臨む体制を作るというのだから、その場で諸君は政権の問題を論じることができるわけだ。これだけ保証しても まだ私が信用できない、承知できないというのなら、今度は私が承服できないな」
そのように論理的に畳み込まれて福田は逃げを打った。
「僕も大平君も一閣僚で 党機関ではない。党の一大事なので、われわれがこの場で諒解をしたら、おそらく挙党協の面々は反対して大混乱になるだろう」
「それでは この五役収拾案には反対だというのかね」
と、三木はきつい表情になってそういった。
「いや、そうではない。われわれは理解できる。しかし挙党協に諮らなければならない。

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本当のことをいえば総理自ら挙党協の幹部に会って説得したらどんなものか」
福田は挙党協からの突き上げに煩わしさを感じて逃げを打ったのである。三木はこう答えた。
「挙党協の幹部に会う……か」
このとき三木のまぶたの裏側には保利茂の顔が浮かんでいた。
ー福田も大平も、最終的には三木・保利会談で話をつけてもらいたいということだろう……。
そう思いながら三木は
「それは難しいな」
といった。
三木としては挙党協という機関は認め難かった。その機関のメンバー、あるいはその代表と会いたくはなかった。会ったとすれば、そのような機関の存在を認めたことになってしまうからであった。と同時に三木は、保利と会うことを好まなかったのだ。
「挙党協幹部に会うなどというよりは、いずれの機会をみて自分は両院議員総会に出て説得にあたりたい。ただしあなた方二人が諒承してくれるならば……だ。それならば自分は議員の全てを説得できる」

この三者会談があまりにも長引いたため、それを待ち受けている挙党協の世話人たちは多分に苛立っていた。時間をかければかけるほど、福田も大平も三木に丸め込まれる。そういう思いがあった。

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福田と大平が自民党本部に現れて記者団との共同会見を行ったのは午後6時40分であった。福田の説明は歯切れが悪かった。
「首相からは五役収拾案を諒承したので、これを決断したい旨が述べられた。また収拾案の考え方について詳細に説明を承った。これを踏まえて私たちとしても、五役収拾案の主旨はよく理解できた、なお今後 党の一致団結で時局の困難に対処していかなければならないということから、あい共に協力していこうという点で意見が一致した。要点はそういうことであります」
この不得要領の経過報告に早速 質問の矢がとんだ。
「それはですね、お二人がずばり、五役収拾案を受け入れたということですか」
福田は頭を右、左に振った。
「理解を示したということ……でご理解願いたい。つまりですな、首相の説明について、よくわかった。今後とも三者協力して事態の打開に当たろうということだ」
「総理の進退問題についても理解できた、ということですか」
「それはだね、五役の提案の文章に書いてある通りだ。色々質問もし 応答もあったが、その中で首相がどのように考えているか、よくわかったということだ」

682

ふっ

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